基礎知識シリーズ④
|製品開発で差がつく“原価思考”の基本
はじめに
近年の製品開発では、「作って終わり」ではなく**“使われ続ける”期間全体でのコスト管理=ライフサイクルコスト(LCC)**の考え方が重要視されています。
一方で、開発初期段階でのコスト設計・管理を意味する「原価企画」と混同されることもしばしば。
この記事では、
- LCCとは何か?
- 原価企画との違い
- それぞれの活用シーン
を図解付きでわかりやすく紹介します。
1. ライフサイクルコスト(LCC)とは?
LCC(Life Cycle Cost)とは、製品が誕生してから廃棄されるまでにかかる全ての費用の合計を指します。
LCCの構成要素:
フェーズ | コスト項目(例) |
設計・開発 | 研究費、設計費、試作費 |
製造 | 材料費、加工費、人件費 |
使用・運用 | 消耗品、エネルギー、メンテナンス費 |
保守・修理 | 交換部品、修理工賃、点検費 |
廃棄・処分 | 解体費、産廃処理費、リサイクル費用など |
🔍 LCCの要点:
一見安く見える製品も、「使う側のコスト(保守・運用)」が高いとトータルでは高コストになることがある。
2. 原価企画とは?
原価企画とは、製品の企画・設計段階で「目標原価」に収めるように設計・仕様・材料などを調整する活動です。
原価企画の特徴:
- 対象:初期段階(企画・設計~製造前)
- 方法:目標原価の設定 → 部品点数削減・代替材料の検討
- 効果:製品価格に見合った原価を先に決めることで利益確保を実現
3. LCCと原価企画の違いと関係
項目 | 原価企画 | LCC |
対象時期 | 開発・設計段階 | 製品全期間(開発~廃棄) |
対象コスト | 材料費・加工費・初期投資など | 運用・修理・廃棄までの総コスト |
目的 | 利益確保・価格競争力 | 長期的なコスト最適化 |
関連職種 | 設計・購買・経営管理部門 | 設計・サービス・企画部門など |
💡 共通点:いずれも“早期にコストを考える”という思考が必要。
4. LCC重視の背景と事例
- BtoB機器:納入後のメンテナンス費用が数倍に
- 自動車業界:トータルコスト(燃費・保険・修理費)まで比較対象
- 建設業界:イニシャルよりランニングコストを優先する顧客増加
【図】LCCと原価企画の関係イメージ図(Word/PowerPoint用):
markdown
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┌─────────────── ┐
│ 製品ライフサイクル │
│ 設計 → 製造 → 使用 → 保守 → 廃棄 │
└────┬────┬────┬────┘
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原価企画 LCC対象
(初期コスト) (全体コスト)
5. 設計・企画職が押さえるべきポイント
- 「安価な材料」ではなく「長寿命で保守不要な材料」を選ぶ視点
- 保守のしやすさ・部品の共通化によるメンテコスト削減
- 原価企画+LCCのハイブリッド思考が利益確保と顧客満足につながる
まとめ
- 原価企画は製品初期段階の利益設計、LCCは長期視点のコスト最適化
- 両者を連携させることで、「作って終わり」ではない製品価値向上が実現
- 特に設計職・企画職にとって、LCC視点を持つことが顧客起点の設計判断に繋がる
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