原価低減と経費削減はどう違う?誤解しやすいポイントを整理

はじめに

「原価低減」と「経費削減」、どちらも“コストを下げる”という意味では同じように聞こえます。
しかし、この2つは目的も手段も大きく異なります

特に製造業やモノづくり企業においては、これを混同すると本来の収益改善につながらないどころか、企業活動に悪影響を及ぼすリスクもあります。

この記事では、

  • 原価低減と経費削減の定義
  • アプローチ・対象の違い
  • VE(Value Engineering)との関係

を事例を交えて整理していきます。


1. 「原価低減」とは?

原価低減とは、製品やサービスの提供に必要なコストを、機能や品質を保ったまま減らす活動です。

原価低減の特徴:

  • 対象:材料費、加工費、物流費、設計コストなど
  • 手段:VE提案、工程改善、設計変更、仕入先見直しなど
  • 目的:顧客満足を損なわずに利益率を高める

2. 「経費削減」とは?

経費削減とは、企業の間接費や運営コストの支出を抑えることです。

経費削減の例:

  • 交際費の見直し
  • 光熱費の節約
  • 会議の簡素化・出張費の削減
  • 備品・消耗品の購入制限

経費削減は即効性はあるものの、過度になると社員の士気低下やサービス品質の低下を招く恐れがあります。


3. 原価低減と経費削減の違いを比較

比較項目原価低減経費削減
対象範囲製品製造やサービス提供に関わる直接費間接部門の支出や管理コスト
主な領域材料費、加工費、設計、物流通信費、交際費、消耗品、人件費等
意識される効果利益率の改善(販売価格は維持)支出の抑制(売上に関係しない)
リスク手間がかかる、技術的検討が必要短期的効果だが士気低下の可能性

4. なぜ区別すべきなのか?

両者を混同してしまうと、「とりあえず安くする」という短絡的な判断で品質低下や競争力低下を引き起こすことがあります。

たとえば、原価低減では「設計を見直して部品点数を減らす」など構造的な改善が中心ですが、経費削減では「コピー用紙を節約する」といった局所的なコストカットにとどまることが多いです。


5. VE(Value Engineering)との関係性

原価低減は、VE(機能本位の価値向上)と非常に親和性が高く、

  • 「本当にこの部品は必要か?」
  • 「もっと安価な代替素材はないか?」
    といった機能とコストのバランスを重視する思考法です

大事なのは「経験、勘ではなく」機能本位の考え方です。

これにより、顧客価値を落とさずにコストを下げる=“本質的なコスト削減”を実現します。


まとめ

  • 経費削減は「運営コストの節約」
  • 原価低減は「商品やサービスにかかる直接コストの構造改善」
  • 目的・手段・効果が異なるため、両者を戦略的に使い分けることが重要です
  • 原価低減はVE・VA実践にも直結する、企業の収益体質を強くする活動です
 

監修者

ファンクショナル・インプルーブメント編集部

製造業の原価低減・VE提案の専門家。
1996年より大手自動車部品メーカーで原価企画・VE推進を担当。
製造業の現場に根ざしたコスト低減施策を数多く企画・実行し、VE・VA活動の定着化支援や設計原価の見える化に精通。
「設計段階から原価の8割が決まる」思想のもと、最適構造設計や購買連携によるLCC視点の改革を実現してきた。

VOICE

  • ★★★★★5
    某大手総合重工業メーカー様
    VEの本質を学び、新たな技術的アイデアを発見
    これまで経験や勘に頼ったVEを実施していましたが、今回の研修を通じて、本来のVE(教科書レベルでなく実践)を学ぶことができました。
    その結果、従来のVEでは気づけなかった具体的なアイデアを抽出でき、大きな気づきを得ることができました。「目からウロコ」とはまさにこのことだと実感しております。今後はこの実践的な手法を活かし、より効果的なVE活動を推進していきたいと考えております。
  • ★★★★★5
    某大手自動車会社様
    「機能本位」の発想で抜本的な改善を実現
    これまでの発想は、主に「モノ」を基準に考えるものでした。しかし、VEの研修を通じて「機能本位」の発想の重要性を学び、単なる部分的な改善ではなく、抜本的な改善が可能であることを実感しました。この視点の転換により、従来の発想では見えてこなかった新しい改善策を見出すことができ、今後の業務において大いに活用していきたいと考えています。
  • ★★★★★5
    某外資系鉄道会社様
    機能別コスト分析による抜本的なコスト改善
    これまで部品単位でのコスト分析は行っていましたが、VEを学ぶことで機能ごとのコスト分析の重要性を理解しました。
    これにより、単なるモノの改善ではなく、コストが高い機能に着目し、より根本的なコスト削減を実現できました。もっと早くこの知識を学んでいれば、より多くの改善ができたと感じています。
    今後は引き続きVEの視点を取り入れ、より戦略的なコスト削減に取り組んでいきます。
 

コメント

この記事へのコメントはありません。

関連記事