はじめに
「この部品、仕入れ単価は安いんだけど…」
そう言って調達担当が困り顔になるケースは少なくありません。なぜなら、単価が安くても、調達全体で見れば高くつくことがあるからです。
本記事では、「単価だけで判断しない」ための**“総調達コスト”=TCO(Total Cost of Ownership)思考**について解説します。
総調達コスト(TCO)とは?
TCOとは、「購入価格+付随費用+運用費用」のすべてを合算した、実質的なコストのことです。
具体的には:
- 単価 × 発注ロット数
- 輸送費・梱包費・通関費
- 在庫管理費・倉庫費用
- 納期遅延による機会損失
- 不良による再検査・再発注コスト
単価だけ安くても、納期遅延が頻発して生産ラインが止まるようでは、結果的にコスト増になります。
総調達コストの構成イメージ
項目 | 内容 |
① 単価 | 製品1個あたりの仕入れ価格 |
② 輸送コスト | 配送料、通関費、梱包、緊急対応費用 |
③ 調達工数 | 発注業務、納期調整、検収業務など |
④ 品質リスク費用 | 不良による再発注・仕損など |
⑤ 在庫保管費用 | 長期在庫・安全在庫・倉庫保管料 |
これらをすべて加味して比較・選定するのが「TCO思考」です。
実例:A社の輸入部品調達ケース
- 中国メーカーから仕入れ(単価120円)→ 総調達コスト:180円
- 関税+船便+不良品再送+納期管理コストが増加
- 国内サプライヤー(単価135円)→ 総調達コスト:145円
- 納期安定・不良率0.3%・緊急対応可能
結果:単価だけ見れば中国有利だが、実質は国内の方が低コスト
TCO思考の導入ステップ
- 仕入先ごとに「単価以外のコスト」を見える化
- 品質・納期・在庫・不良率などの“非価格要素”を定量評価
- 設計部門・営業部門と協力して「調達インパクト」を全社で共有
まとめ
調達における“賢い選択”とは、単価の安さを追うことではなく、全体コストで有利な選択肢を選ぶことです。
TCO思考を導入すれば、調達の見え方が変わり、「結果として安く、安全で、安定した取引先」が選べるようになります。
調達改善の第一歩は、“価格”よりも“価値”を基準にすること。
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