調達改善⑩ 調達改善の成功事例 5選(コスト5%→20%削減)

はじめに

「価格交渉」だけが調達改善ではありません。 設計・工程・調達手法の見直しなど、部門を横断した取り組みによって大きなコスト改善が実現できます。

ここでは、実際にコスト5~20%削減を達成した5つの成功事例を紹介します。


電子部品:VE提案によるコスト20%削減

  • 内容:プリント基板の回路見直し+部品代替案を設計段階でVE提案
  • 効果:部品点数削減、代替品採用により20%コストダウン
  • ポイント:設計部門と調達部門の連携

機械加工品:競合見積で10%削減

  • 内容:長年取引先に相見積を実施し、単価の妥当性を評価
  • 効果:新規取引先開拓+コスト10%削減
  • ポイント:図面精査と製造方法提案も加味

板金加工品:工法転換で30%削減

  • 内容:複雑形状の溶接構造 → マルチフォーミングに変更
  • 効果:加工工程削減、材料歩留まり改善で30%削減
  • ポイント:サプライヤー主導のVE提案

樹脂成形品:部品統合で15%削減

  • 内容:2部品構成 → 一体化による金型変更と同時成形
  • 効果:部品点数・組立工数減で15%削減
  • ポイント:設計初期から金型メーカーとの協働

物流:共同配送で20%削減

  • 内容:近隣企業と配送ルート統合、トラック積載最大化
  • 効果:車両台数削減、物流費20%ダウン
  • ポイント:サプライチェーン全体の見直し

グローバル調達のコスト比較術(国内 vs 海外)

国内調達と海外調達を比較する際は、単純な価格差だけでなく**TCO(Total Cost of Ownership、総保有コスト)**の視点が重要です。部品の調達単価の裏には様々なコスト要因が潜んでおり、それらを「見える化」して評価することで、海外調達が本当に得かを論理的に判断できます。以下に主なコスト項目を整理します。

  • 為替リスク:為替相場の変動により輸入コストは増減します。例えば円安が進めば海外からの調達品価格は割高になり、利益を圧迫する可能性があります。
  • 輸送費・関税:海外からの調達には国際輸送コスト(海上・航空運賃)や保険料がかかり、輸入時には関税や通関手数料も発生します。これら輸入コストを含めて比較する必要があります。
  • リードタイム:海外輸送は時間がかかり、納期遅延のリスクも高まります。実際、船便では2~3週間を要し、国によっては通関に遅れが生じることもあります。調達リードタイムが長いと在庫増加による金利・保管コストも増えます。
  • 品質トラブル:海外サプライヤーの技術水準や品質管理の差から、不良品発生やリワーク対応などのコストが発生する可能性があります。小ロットでは問題なくても量産時に不良率が増え、結果的にコスト増となるケースも報告されています。
  • コミュニケーションコスト:言語・文化の違いや時差によって意思疎通に時間と労力がかかります。情報伝達ミスにより仕様齟齬が生じれば、手直しの時間と費用の無駄につながります。海外拠点訪問の渡航費や、人材の配置コストも考慮が必要です。

このようにTCOに含まれる見えないコストまで洗い出すと、価格差の見方が変わります。ある企業では、中国からの調達価格は一見30%安価でしたが、TCOを適用した比較では総コスト差は10%程度に縮小したといいます。また、隠れたコストは平均15~25%にも上るとの分析もあり、為替変動や関税変更など将来のリスクを見込めば逆転するケースも少なくありません。最終的な判断軸として、単価だけでなく上記の総コスト要因を定量的に比較し、総合的な損得勘定で意思決定することが重要です。例えば「価格優先で海外」「リードタイム重視で国内」など、自社の状況に応じた優先順位を定め、グローバル購買戦略の一環として最適な調達先を選定しましょう。


調達改善の成功事例5選(コスト5%→20%削減)

コスト上昇圧力が高まる中、各社で創意工夫による調達コスト削減事例が生まれています。ここでは、電子部品から物流まで5つのカテゴリー別に、調達・購買部門が実践した具体的施策とその成果を紹介します。VE提案や再見積もり、発注先統合といった仕入改善の取り組みがどのような効果を生んだのか、実務のヒントとしてご覧ください。

  1. 電子部品の事例 – 設計VE提案でコスト20%削減
    ある電子機器メーカーでは、プリント基板上の電子部品構成を見直すVE提案をサプライヤーと協働で実施しました。機能・品質を維持しつつ部品点数の削減や代替部品の検討を行い、量産性を考慮した回路設計に最適化した結果、調達コストの20%低減に成功しています。このVE購買例では品質向上も同時に達成し、以降の新製品でも設計段階から購買がコスト視点で関与する体制が構築されました。
  2. 機械加工品の事例 – 再見積もり・競合比較でコスト10%削減
    精密機械部品の調達では、長年取引のある仕入先から提示された価格を一度「見える化」し、複数社への再見積もりを実施しました。図面の要求公差や素材の変更余地も検討しつつ、競合見積もりによる価格交渉を行ったところ、約10%の単価引き下げを実現。仕様変更なしでコストダウンできた好例であり、以降も定期的な相見積もりで価格適正化を図っています(発注先の競争原理の活用)。
  3. 板金加工品の事例 – 工法改善でコスト30%削減
    板金プレス加工品では、製造プロセスを見直して大幅なコスト低減に成功した事例があります。従来はプレス打ち抜きと溶接で製作していた薄板ばね部品について、加工方法をマルチフォーミング(金属板の連続曲げ成形)に変更。これにより材料ロスが減り、約30%ものコストダウンを実現しました。工程短縮でリードタイムも短くなり、品質も安定しています。このように製造方法の最適化によるコスト削減は、板金分野で有効な施策です。
  4. 樹脂成形品の事例 – 設計統合でコスト15%削減
    プラスチックの樹脂成形部品では、部品点数の削減と成形効率の向上によってコストダウンした例があります。複数の樹脂パーツを一体化できるよう製品設計を見直し、1つの金型で同時成形することで組立工程を削減しました。その結果、部品あたり約15%のコスト減とリードタイム短縮を達成しています。 金型投資は必要ですが、生産数量が多い場合は部品統合によるVE効果で十分に元を取れ、品質一貫性も向上するメリットが得られました。
  5. 物流の事例 – 共同配送で輸送コスト20%削減
    調達品の物流コスト削減の成功事例として、共同配送スキームの活用があります。建材メーカー2社が配送拠点とルートを統合し、トラックの積載効率を最大化する取り組みを実施したところ、必要車両台数を2割削減できました。 拠点集約による倉庫費用のシェア効果も生まれ、輸送コスト全体で約20%の削減を達成しています。加えてドライバー不足の緩和や環境負荷低減(走行距離削減)といった副次効果も得られました。これはサプライチェーン全体の最適化によるコスト削減例といえます。

以上、5つの事例を見てきました。いずれのケースも、単なる値下げ要求に留まらず、設計・工程の工夫や調達先の見直しなど調達改善の施策を講じることで持続的なコスト低減を実現しています。自社の状況に照らし、ぜひこれらの仕入改善アイデアを応用して、調達コスト5%→20%削減にチャレンジしてみてください。


まとめ

調達改善は「単価交渉」に留まらず、設計・工程・取引先・物流の全体最適で進めることが鍵です。 本記事の成功事例をヒントに、ぜひ自社の改善活動に応用してみてください。

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