はじめに
製品の原価を設計段階で下げるには、「材料の安いものに変える」「部品を減らす」といった単純な発想では不十分です。
本当に必要なのは、“機能を満たしながら、コスト・加工性・組立性・信頼性も両立する”構造を考える力──すなわち「最適構造設計」の視点です。
この記事では、最適構造とは何かを明らかにし、設計者がコストと機能を両立させるための設計思考と、実際の事例を紹介します。
最適構造とは?
最適構造とは、「必要な機能を過不足なく実現し、かつコスト・性能・量産性・信頼性のバランスが取れた構造」を意味します。
単なる強度確保や材料削減ではなく、以下のような複数の観点から構造を組み立てる必要があります:
- 必要最小限の機能を満たす
- 過剰仕様を避ける
- 工法(加工・組立)の簡素化
- 点数・重量の削減
- モジュール化、標準化
よくある“過剰設計”の例
- 肉厚10mmの金属板 → 念のためだが実は5mmで十分
- 10箇所のビス止め → 落下試験でも4箇所で問題なし
- 複雑な湾曲デザイン → 金型費+加工工数が激増
これらの仕様は、ユーザー価値に直接つながらない“無駄なコスト”を含んでいます。
設計時に意識すべき4つの最適構造視点
- 機能別に「どこまで必要か?」を定義する
- 耐荷重は?放熱性能は?見た目は?
- 構造をシンプルにする
- 一体成型化/折り曲げ構造/はめ込み式など
- 標準部品化・共通化を考える
- オリジナル形状を避け、既存部品で構成
- 加工・組立の視点も同時に設計に取り込む
- “誰が、どう加工・組立するのか”まで想像する
実例紹介:筐体フレームの構造見直し
- 旧設計:アルミCNCフレーム、5部品組立、10箇所ビス止め
- 新設計:L曲げプレート+リベット留め+はめ込み構造 → 部品点数40%減、組立時間半減、材料費15%削減
結果:強度・剛性・外観は維持したまま、年間250万円のコストダウンに成功
まとめ
最適構造設計とは、「部品を減らす」ことではなく、「必要な機能を最小限のコストで実現する方法」を追求する思考です。
そのためには、設計者が“機能と構造とコスト”を一体で考え、VE・VAの視点を初期段階から取り入れることが不可欠です。
価値を上げながらコストを下げる。それが現代の設計者に求められる最適構造設計なのです。
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