設計原価低減⑦ 設計者だけで進めない!知見者を巻き込む初期レビューの進め方

はじめに

多くの原価問題は、設計完了後に“気づかれる”ことが少なくありません。 「もっと早く言ってくれれば……」という声が、製造・購買・品質現場から上がる背景には、設計初期における情報の分断があります。

設計原価を本質的に下げるためには、“設計者だけで完結しない”体制づくり──すなわち多部門の知見を巻き込んだ初期レビューが不可欠です。

この記事では、その目的・効果・進め方を事例とともに解説します。


設計段階での“独走”が生む問題

  • 材質は設計者の好みで決定 → 調達価格が高騰
  • 組立しにくい構造 → 製造ラインで時間と不良率が増加
  • 加工困難な形状 → 工法変更・再見積もりが必要に

これらはすべて、「早期に相談されていれば防げた」ことがほとんどです。


初期レビューの目的とは?

  • 設計段階で“実現性・コスト・生産性・信頼性”を事前に確認
  • 各部門の知見を設計に反映する
  • 後戻りを防ぎ、量産前の完成度を高める

参加すべき“知見者”とは?

部門視点主なアドバイス
製造工法・工数組立性・加工難度・冶具有無
購買調達性材料・外注費・納期リスク
品質品質保証検査方法・過剰公差・耐久性
営業・企画顧客要求スペックと価格のバランス

初期レビューの進め方(3ステップ)

  1. コンセプト設計時点でのレビュー機会を設ける
    • 「図面完成後」ではなく「構想設計段階」で共有
  2. シンプルな情報共有資料を準備
    • 材料・構成・主要寸法・目標コスト・用途
  3. フィードバックを“仕様化”に反映
    • 形式だけで終わらせず、設計仕様や方針に反映し議事録化

実例:フレーム構造の初期レビュー

  • 設計者案:強度確保のため鋼板溶接構造 → コスト高+加工リードタイム長
  • 製造から「曲げ構造でも強度が出せる」と指摘
  • 結果:曲げ加工+一体構造で部品点数30%削減、製造時間半減

成功のコツ

  • 「設計側が主導」ではなく「全体でつくる」姿勢を持つ
  • 評価軸は“コストだけ”ではなく“機能・品質・製造性”を含める
  • レビュー結果はテンプレ化して他案件にも展開

まとめ

設計初期に多部門の知見を取り入れることで、手戻りコストや後工程トラブルを未然に防ぐことができます。

“設計=一人で完結する作業”という発想から脱却し、“設計=多部門連携による意思決定プロセス”へ。

それが、設計原価低減の最短ルートです。

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